1980年代当時、自主製作レコードのジャケットというのは「とりあえず誰か知り合いに絵が描ける人がいるから書いてもらった」とか、「なんか適当に写真をとったら格好良かったので使った」というような類が多かった。
いや、実際には最もアンダーグラウンドに多かったのは、「真っ白の地にタイトル」とか「地が真っ黒にバンド名」とかの味も素っ気もないものも多かった。


そんな中で多少のセールスを狙ってくる人たちはアンダーグラウンド関係の若者たちに影響のある漫画家やイラストレーターなどにジャケットを頼むこともあった。そのほとんどは漫画誌「ガロ」(※注1)と関係のある漫画家で、名前を挙げれば、花輪和一蛭子能収丸尾末広などに始まるそうそうたる面々が自主製作レコードのジャケットを飾った。

▲TACOの表ジャケット/花輪和一 ▲TACOのライブ盤/霜田恵美子 ▲ばちかぶりファースト/蛭子能収 スターリンの「虫」/丸尾末広

今では「ガロの漫画家」ときいてもピンと来る人は少ないかもしれないが、当時のサブカルチャーフィールドの中で、それは大変に影響があり、インパクトの強い存在だったことは確かだ。テレビに出る前の蛭子さんなんかもこのあたりのサブカル仕事で楽々儲けていたという印象がある。

花輪和一は別冊漫画アクションなどに時代物のおそろしく優れた漫画(当時、高校生だった私は一発でノックアウトされた)を書いていた人だったが、その後、拳銃所持で実刑を受け、刑務所暮らしなどもする。その獄中生活を漫画にも書いて、映画化もされた。
なんかこのあたりは覚醒剤で逮捕された際に獄中記録を本にして出版した鶴見済とも似て、たくましいところであります。



(※注1)「ガロ」に関してはご存じない方は簡単な歴史だけでも知って下さい。私の書いている1980年代にすでに実売数千部にまで落ち込んでいた漫画誌でしたが(、その文化的歴史はなにものにも代え難いです。また、メディアが紙媒体からインターネットに移ったともいえる今、もはやガロのような文化メディアの主つげは難しいとも思います。
ガロに関して、簡単に知りたい方はウィキペディアなどでどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ガロ_(雑誌)