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▼狂い咲きサンダーロード(1980年)宣伝PHOTO
石井聰亙自身はミュージシャンではなく映画監督だが、インディーズ音楽シーンへの影響が非常に大きかった人物だ。あの頃の音楽に付随する時代性の中の文化として、1982年に監督した作品『爆裂都市 Burst City』を外すことはできない。
石井聰亙は、1976年の「高校大パニック」でメジャー監督デビューした後、着実に人気と実力を獲得。その後、1982年に企画・撮影されたこの『爆裂都市 Burst City』はその出演者を見るだけでも今では興味深い。主役こそロッカーズの陣内孝則だったが、準主役にルースターズの大江慎也、池畑潤二。脇を固める面々が、町田町蔵、コント赤信号、室井滋、スターリン、麿赤児、平口広美、戸井十月、上田馬之助、泉谷しげる
という、ある意味、カルト超大作だったのである。
映画は、暴走族と警察、パンクス、そして貧困層の人間たちの蜂起などを描いたマッドマックスもどきの近未来映画で、ストーリーや映画のデキにはい ろいろと評価があるだろうが、パンクバンドそのものとしての役で出演していたスターリンの姿などは、当時の若者たちを狂喜させたものだった。(STOP JAP!に収録されている「ワルシャワの幻想」と、TRASHに収められている曲を演奏している。後者は、「愛」と書かれた棍棒を手にロッカーズのコンサートに乱入して、演奏を開始する私の大好きなシーンだ)このスターリンの役をめぐって、アナーキーの中野茂が映画の打ち上げに乱入し、(「なぜ、あの役をアナーキーに回さなかったのか」という文句)もめ、その後、 スターリンとアナーキーに緊張関係が続いたという有名な逸話があるが、実際どうだったのか今となってはよくわからない。
いずれにしても、メジャーグラウンド映画にアンダーグラウンド音楽シーンをぶちまけた「爆裂都市」は語り続けられるべきものだろう。
もちろん、石井聰亙という映画監督も。
私には何となく体感できるが、当時はこれを「アンダーグラウンド」として片づけないイメージはあったはずだ。つまり、「今のバンクやアンダーグラウンドが時代の文化を担う音楽になる」という幻想にも近い願望があったのだ。実際にそういうことが起こったか起こらなかったかはともかく、表面的には幻想だったかもしれない。
ちなみに、石井聰亙の映画監督としての最大の名声はこの「爆裂都市」の前の作品「狂い咲きサンダーロード」にある。日本映画史上に残る超傑作だ。
「爆裂都市」からスターリンvsロッカーズの場面より
http://www.youtube.com/watch?v=hqd90qtDCoo
▲映画「爆裂都市」より。ロッカーズのコンサートにスターリン一派が乱入してライブジャックをする場面。スターリングループの持つ戦闘用の鉄パイプには「愛」と書かれている。
[石井聰亙 公式サイト]
http://www.ishiisogo.com/
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昨年、DVD-BOXが発売され、これには『高校大パニック』『1/880000の孤独』『突撃!博多愚連隊』『狂い咲きサンダーロード』『シャッフル』『アジアの逆襲~2005 REMIX LIVE VERSION~』が収録されている。『狂い咲きサンダーロード』と『シャッフル』を見られるだけでもかなり価値がある。
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